毎日の出会いは一期一会

毎日出会うすべてのものたちから、記憶に残したいものを少しだけ

海外で暮らすこと

最近、作家の辻仁成さんの日記を読む機会が増えている。彼はパリで暮らしていて、今、リースしている新車のトラブルに巻き込まれている。その日記を読んで、ふっと昔のことを思い出した。


結婚してすぐ、夫と1年半くらい住んだアメリカでのこと。
アメリカの田舎で暮らすのに車は必須ということで中古のドイツ車を買った。水温が時々高めになるので気をつけるようにしていたが、ラジエターが悪いわけでもなく日常生活で使うのには全く問題なかった。ある時、数日間の旅行に出るため、事前にディーラーにチェックをしてもらった。その当時の私たちにしてはチェック代は高額だったけれど、デザート(砂漠地帯)で何かあったらお手上げになるので、楽しい旅の保険代だと思ってお願いし、車は問題ないとのお墨付きをもらった。
アメリカのフリーウェイはひたすら続く道を、ひたすら走り、やっと出てきた町があるとガソリンを入れ、そこでおなかも満たす、という繰り返し。ラジオなんかもつけて気分良く走っていたが、ふっと見るとバッテリーのランプがチカチカ点いたり消えたりしている。バッテリーを消耗しているのかも、とラジオを消し、なるべくバッテリーを消費しないように走っていたが、そのうちにランプがつきっぱなしになり、おまけにエンジンもガタガタと止まりそうになったので、思い切ってフリーウェイの出口で降りることにした。
周りに何もない出口だったが、降りてフラフラ走っているとちょっとした店と公園のようなところが見え、大きめのパーキングが隣接していたのでそこに車を止めた。エンジンを切り、ボンネットを開けて中をチェックしたが水漏れの様子もないし、バッテリー液も入っているし、特に何か問題があるようにも見えない。ところが再度エンジンをかけようとしたらかからなくなった・・・。
ちょうど数台離れたところで、ボンネットを開けて何か作業のようなことをしている男性がいた。その男性に「車のエンジンがかからない・・・」と話をすると、親切にも車を見にきてくれた。しばらくゴソゴソ中を見ていたが、突然、「これだよ!」とコードを掲げながら大声で叫んだ。「なんてラッキーなんだ!こんなこと、宝くじが当たるよりもすごいぜ!!」「あそこに店が見えるだろ?あの店にこういう部品が売っていると思うから買ってきな。つけてあげるよ」
なんと、エンジンとバッテリーを繋ぐコードが外れていたらしく、車の振動で接触したり外れたりしていたことが判明。走ってDYショップのような店で部品を買ってくると男性が工具を持ってきて取り付けてくれた。その後エンジンも無事かかり、ランプも消えて、問題なく走ることができた。帰宅後、すぐにディーラーに文句を言いに行ったが、私たちの車の点検をした人はバカンスでしばらく帰ってこない、他の人は何もわからない、との一点ぱり。逃げを貫き、補償をするつもりもないのは見え見えだった。

イタリアで数年暮らしていた時にも、駐車場に止めておいた車が激しくぶつけられて潰れていて、その時はぶつけた人もわかっていたけれど、そのぶつけた高齢の男性は訳のわからない主張を繰り返し、結局修理代の支払いはしなかった。車は私たちがかけていた保険から修理をしたのだけれど、その際にもイタリア人の知り合いがその高齢の男性との交渉をかってくれた。

海外暮らしというと、いいなぁと言われる。でも私たちアジア人は、西洋人の社会で同じように扱われるとは限らないし、会話はできても専門用語を使いこなせる言語能力もない。そんな中でも自分が戦って勝ち取っていく姿勢は海外で学んだことでもある。誰かが守ってくれるのではなく、自分が戦うことでしか結果は得られない。
でも、追い詰められたり落ち込んだりしていても、どこにでも心広い親切な人はいるし、できれば自分も困っている人を助けられるような心の広い人間でありたいと思う。

 

 

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先日見かけたヒカゲチョウ。地味なチョウだと思っていた。でも、ちょっと翅を広げたらシックな色!